大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(う)697号 決定

被告人 中村進 外一名

〔抄 録〕

三、論旨は、さらに、「公判調書閲覧問題」と題して、原審の熊谷裁判長が東大関係事件を担当する他の部の公判調書を閲覧した点、憲法七六条以下の「裁判官の独立」を定めた規定ならびに同法三七条一項の公平な裁判所の保障に違反すると主張する。そこで、この点につき記録を検討するに、原審の第六回ないし第八回各公判調書によれば、原裁判所は、前記した「同一日時における重複法廷」に関する弁護人側の主張に対し裁判所としての見解を示すため、東京地裁の各部に係属する東大関係事件につき、弁護人の選任状況、弁護人らの事前準備の程度、各公判期日における弁護人の出頭状況、出廷した際の法廷での発言事項等を調査したものであって、その調査にあたっては、各部の書記官から回答を求め、あるいは原裁判所所属の書記官が他の部に赴いて調査するなどし、時には原裁判所を構成する陪席裁判官が他の部の公判調書を閲読したこともあること、しかして右の調査やそれに伴う公判調書閲読は各部の公判手続に限って行なわれたものであり、その公判において取調べられた証拠やその内容などはなんら対象とされなかったこと、以上の事実が認められる。右の事実によって考えれば、原裁判所が前記のような調査をしたことが特に違法であるとは考えられず、その調査過程において他の部の公判調書の手続部分を閲読したからといって、直ちに憲法七六条の規定する裁判官の独立に違背するとはいい得ず、同法三七条一項の公平な裁判所の理念にもとるものとも考えられない。論旨は理由がないというべきである。<中略>

五、次に、所論は、「予断排除の原則違反」と題し、東京地裁は、東大関係事件の被告人らを三六のグループに分割して審理する方針をとったのであるが、その過程において裁定合議委員会が各被告人の逮捕歴、派閥、自白の有無等を調査したことは、予断排除の原則に違反し、当事者主義の訴訟構造を破壊したものである。右委員会の調査は原裁判所の調査と同視すべきものであり、また、原審裁判長は裁判官会議で右調査結果を承認した。このような原審の訴訟手続は憲法三一条、三七条一項、刑訴法二五六条六項等の諸規定に違反するものである。と以上のように主張する。しかしながら、原審を構成する三名の裁判官が所論の裁定合議委員会の構成員でなかったことは記録上明らかであり、右委員会の調査は原裁判所の調査と同視すべきであるとの主張は独自の見解であって理由がない。右委員会の調査は、事件の配点を適正かつ合理的に行なうために司法行政上の要請としてなされたものと考えられるから、右委員会が所論のような調査をし、その結果が司法行政の主体である裁判官会議に上程され原審を構成する裁判官らの了知するところとなったとしても、それは司法行政上やむを得ないことであって、原審の審理手続に影響を及ぼすものではないというべきである。そのほか、原裁判所が予断排除の原則に違反したことをうかがうに足る事実は、記録上全く見出し得ないところであるから、原審手続の違憲、違法をいう論旨は理由がない。

(高橋 寺内 千葉)

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